ロボット介護機器開発への
マニュアル・ハンドブックの活用のすすめ

 今回は、2022年1月21日に実施した「開発を加速するガイダンス・マニュアル等の徹底活用:ロボット介護機器開発安全ハンドブック活用のすすめ」セミナー(Web開催)の内容を基に、これまでに作成されたマニュアル・ガイドラインについて紹介いたします。
 はじめに、経済産業省および国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下、AMED)の関連事業でこれまでに作成してきたマニュアル・ガイドラインは、どのようなものがあるのでしょうか。作成された時期・分類・マニュアル/ハンドブックの名称を図表1にまとめています。

図表1 AMED事業で作成したマニュアル・ガイドライン

 ロボット介護機器を開発する上で欠かせない安全性評価基準、効果性能基準、実証試験基準など、多数の有益なマニュアル・ハンドブックが整備されてきています。これらは、当ポータルサイトから無料でダウンロードが可能です。
 ところで、これらのマニュアル・ハンドブックは、どのタイミングでどのマニュアルを見ればよいのでしょうか。それを簡単に整理したものが図表2です。

図表2 V字モデルと代表的なマニュアル類の位置づけ

ロボット介護機器の開発者の皆様なら一度はV字モデルを見聞きしたことがあるのではないかと思いますが、経済産業省・AMEDによるロボット介護機器関連事業では、ロボットの安全設計から安全検証計画立案、安全試験までの一連の流れとして、「ロボット介護機器の開発のV字モデル」を提案しています(詳細は「 ロボット介護機器開発のための安全ハンドブック第2版」P4をご参照ください)。図表2では、様々あるマニュアル類の中でも、特に目を通していただけると良いマニュアルについて示しています。

 初めに、ロボット介護機器及び介護機器市場を理解するためには、以下2つの資料が特に参考となります。
  ・「ロボット介護機器開発ガイドブック」
  ・「ロボット介護機器に関するニーズ調査」
これらの資料では、現在ロボット介護機器開発事業者が取り組んでいる機器の特徴やニーズ等を、一般的観点から取りまとめています。なお、介護現場における課題やニーズも日々変化しています。特にCOVID-19によってもたらされた感染対策の強化、非接触対応など、最新の情報については、日々の介護施設の方々とのタッチポイントで情報を得ておくことが重要となります。
 次に、「開発コンセプトシート」があります。ロボット介護機器開発を始める前に、まずはロボット介護機器が必要な介護シーンへの理解を深めることが重要です。その際に役立つシートとなっています。目標となる活動の明確化、要素動作の明確化など、介護シーンを分解して理解することで、現場で実運用できる機器開発に近づけます。
 実際の開発が始まる際には、以下のマニュアルが参考となります。
  ・「ロボット介護機器開発のための安全ハンドブック 第2版」
  ・「ロボット介護機器の安全制御回路開発ガイダンス」
  ・「安全化設計技術指導書」
もちろん、開発する機器の種類や特性により、開発時の留意点は異なりますが、共通して必要となる重要な知識を得るためにこれらの資料が役立ちます。
 最後に、「ロボット介護機器実証試験ガイドライン第2版」です。こちらのガイドラインにより、開発後半で必要となる評価の在り方や評価の進め方について事前に検討しておくことが可能となるため、システム設計フェーズ、要件定義フェーズで先に一読しておくことをお勧めします。

 多数あるマニュアル・ハンドブックの内容を簡単に取りまとめた表が図表3、図表4です。

図表3 マニュアル・ハンドブック掲載内容 (2013-2017)

図表4 マニュアル・ハンドブック掲載内容 (2018-2020)

図表3、図表4の表の読み方:
 ・上から下へ開発の流れに沿って整理されています
 ・A~Iは各種マニュアル・ハンドブックを示しています
 ・★〇△はそれぞれ、各開発項目の内容がどの程度記載されているかを示しています

各マニュアル・ガイドライン内では、メインで取り上げていること、概要のみを取り上げていることがあります。ご自身が知りたい内容を数多くあるマニュアル・ハンドブックの中から簡単に探して該当箇所をご一読いただくために、是非図表3、図表4をご活用いただければ幸いです。

 これからマニュアル・ガイドブックを活用される方、また既に活用しているが再確認したい方にとって、マニュアル・ハンドブックを改めて活用する機会になることを願っています。既にロボット介護機器の開発に取り組んでいる事業者の方には、振り返りの機会として活用いただき、これからの次期開発に活かしていただけると幸いです。これから介護機器開発に取り組もうとしている事業者の方には、ロボット介護機器にある様々な懸念点・不明点等に対して、それらを解消するとともに開発をより効率的に進めるための一助としていただけることを願っています。